下田修平のブログ (ほぼ休眠中)

選挙立候補時の経験を書いてみました、今後無所属でどこかに立候補される方の参考になれば幸いです。今は普通に勤め人です。

①ここが変だよ軽井沢町政

 私は、軽井沢町の町会議員でもありませんし、もっと言うと住民票もこの町にはありません(近日中に住民票移しますが)。年に数回やってくる、いわゆる別荘民です。別荘民と言ってもハイソ感はなく、もし今売りに出しても1千万円も値段つかないような、慎ましい土地家屋であります。そんな分際で、なぜ町長選立候補なんて言い出したのか?その前に、まずはこの町の「不都合な真実」をお話しいたします。

 

1.軽井沢のいびつな税収構造

 この町の税収の約67割は固定資産税、その内約8割は非住民≒別荘族からもたらされています(20209月の町議会での答弁で、町役場職員がそのように回答)。つまり、税収全体の約半分が、別荘族からのもの。それにより、市町村別の財政力ランキングで、軽井沢町は全国4位になっています(下写真、アパマンの公式サイトより。財政力指数は、総務省の定義する基準財政収入を基準財政需要で割ったもの。2020年時点)。なお、ここに登場する2位、3位、5位の自治体はいずれも原発を抱え、6位は関空、7位はディズニーリゾートの所在地(1位の飛島村については後述)。こういった一発ドカンの財源なしで4位に食い込んでいる軽井沢は、異例と言えます。別荘族から大きな税収を吸い上げることができる一方、この別荘族には当然ながら投票権が有りません。なので、投票権の無い別荘族から何言われても痛く無い政治構造が完成しています。

 

 

2.町役場改築を現職町長が推進

 前回選挙が19年1月、それからの4年間の内約半分の期間はコロナの影響を受け、町内の観光業は大打撃。旅館や飲食店は厳しい時代を耐えてきました。その中での、庁舎改築提案。たしかに現庁舎は築53年、そろそろ建て替えても良い時期かもしれないですが、町民の多数が未曾有の危機に瀕している時にやることなんでしょうか?町民感情を考え、数年遅らせるのが常識というものでは?

 しかも金額も非常識です。21年3月時点では約60億円と言っていたものが、22年8月には「新庁舎の隣に複合施設もくっつけて、110億円」に。しかも、今後の資材価格によっては更に増額見込みとのこと。人口2万人の町には、明らかに分不相応。なお、近年の他自治体(人口10万人未満)の庁舎新築・改築の事例を自分でいろいろ調べてみましたが、下表のようになりました。軽井沢町の人口あたり庁舎建設費用の高さは、一目瞭然です。しかし税収の半分は別荘族から来ているのですから、痛みの半分は別荘族が負担してくれるという見方もあります。

3.過去にもあった、中学校建設54億円

 そもそも、これが最初の話では無いのです。2016年に竣工した軽井沢中学校は54億円で改築しています。これも、公立中学校としては破格。生徒数一人あたりで割って1000万円を超える例は少ないのです。この表で軽井沢を唯一超える千葉県旭市立飯岡中は、東日本大震災津波被害による校舎の移転、という特殊事情がありました。新校舎の屋上には1500人が避難できるスペースとして、周辺住民も使えるように外階段を設置。非常用発電機や雨水を再利用したトイレ洗浄水の確保し、防災設備も充実させたために費用がかさんだのです。このような特例を除けば、やはり軽井沢町の突出したハコモノ行政が浮き彫りになります。

 教育に真に必要なのは豪華なハコモノではなく、多様な教育プログラム(都市部とのデュアルスクールや、町内私学のISAKや風越学園との交流)、信州大学等との提携、優秀な外部講師の招聘、教員の資質能力向上、奨学金の拡充等ではないでしょうか?現職町長はこの時の批判も全く気にせず、庁舎改築に邁進しているのです。

4. 住民全てに喜ばれる町政とは?

 庁舎にお金をかけても、喜ぶのは主に職員と建設業者。一般住民にとっては、日常生活では庁舎とほぼ無縁。どんなに税収があっても、利益配分に偏りがあっては住民に喜ばれません。前掲の財政力ランキングで一位となっている飛島村の例が、参考になると思います。

 軽井沢とは異なり、港湾物流や鉄鋼・木材といった企業及び火力発電所からの固定資産税や法人住民税が税収の柱である飛島村。ここの税収還元策が充実しています。18歳まで医療費無料、要介護高齢者へのタクシー券補助(年間最大61200円)、結婚祝い(5万円/組)、育児奨励金(10万円/子)、就学祝金(10万円/子)、長寿祝い(20万円〜100万円)、といった幅広い年齢層への補助が実施されているのです。加えて村立飛島学園は愛知県初の小中一貫校として有名であり、毎日の給食は小1から中3まで全員同じホールで食べるというユニークな試みも。中学2年では、一部生徒をカリフォルニア州に7日間派遣しています。

 企業から徴収した税金を遍く住民に行き渡らせる飛島村に対し、別荘族から徴収した税金を一部の既得権益層が享受する軽井沢町。他の町と比較することで、軽井沢町の異常がよく理解できると思います。