下田修平のブログ (ほぼ休眠中)

選挙立候補時の経験を書いてみました、今後無所属でどこかに立候補される方の参考になれば幸いです。今は普通に勤め人です。

③軽井沢町の課題と対策

 庁舎は行政サービスの手段の一つに過ぎず、それが目的化されるべきではありません。庁舎に快適性が求められることはあっても、必要以上の規模や機能は公的設備に不要です。そして庁舎というハードだけではなく、ソフト面でも住民に快適と思ってもらえる施策を推進するのが町政の任務です。勿論老朽化による建替えそのものは避けられないにしても、町役場の業務の見直し、電子化による効率向上を図ることで、対面業務の縮小=必要とされる空間の削減が検討されるべきです。これにより、単に庁舎建設費の削減や町役場効率化が達成できるだけでなく、住民にも手続きの簡素化というメリットが生まれます。

この前提の下で、特に注力したいと私が考える課題を下記に挙げます。ポイントは、「住民全体にメリットのある施策」です。立派な庁舎を建ててもらって喜ぶのは、職員と建設業者だけです。住民のほとんどにとっては、どうでもいいことです。一方で軽井沢と同様に財政力が強い自治体、例えば愛知県飛島村では、結婚祝い、出産祝い、長寿祝いといった補助金や、要介護者へのタクシー券配布といった福祉面の充実が実現されており、税収からの富の再配分が社会全般に行き渡っています。このような「住民全体」という視点に加えて、軽井沢という町の特殊性(観光都市であり、且つ文化保養都市である)を視野に入れ、住民以外の人たち(観光客や別荘民)にとってもメリットある対策が十分に検討されるべきと考えます。

 

1.行政手続きと役場内業務のデジタル化・簡便化 →庁舎規模の縮小

 既に町政が想定している窓口業務のオンライン化を前倒し導入し、住民がわざわざ役場まで来なくても手続きできるシステムを構築します。そのためには町役場内部の業務のデジタル化が必要となり、例えばハンコで稟議を回すのではなく電子専決決裁で業務が回る、という業務形態が前提となります。それにより、

 ①必要とされる窓口スペースや駐車場の縮小 →庁舎規模の縮小

 ②手渡しの書類が減り、職員のリモートワーク可能に →職務スペース=庁舎の縮小

 ③業務効率化により、オンライン手続きに慣れない高齢者や介護者への訪問工数確保

が実現できます。現状の庁舎改築計画では、将来的にデジタル化が進んだ場合にそのスペースを住民交流スペースへ転用となっているが、そうではなく初めから業務デジタル化を前提としたコンパクトな空間設計とします。既に中央公民館等の交流スペースは存在しており、そのような空間を庁舎・複合施設に織り込む必要は無し。その分土地は余ることになりますが、そこに軽井沢らしい緑化・植林を図ります。

*既に「ながの電子申請サービス」が開始されているが、まだ婚姻届けや住民票移動、運転免許返納といった主要手続きには対応できていない。飼犬死亡届や水道用途変更届等に留まっている

*国のデジタル庁が発足したものの、脱ハンコ行政の進展は鈍い。既に先行してデジタル決裁導入した茨城県のような自治体の例が参考になる

 

2.オーバーツーリズムへの対応

 もともと軽井沢は、インバウンド隆盛以前からGW・夏季休暇の「町内パンク状態」が常態化。プリンス通り等が渋滞し、町中至るところに行列のできるレストラン。それでも町政は観光事業を無分別に推進してきました。加えてアフターコロナ時代を迎え、インバウンドの本格的復活が23年に見込まれます。住民及び観光客のストレスを緩和するために、下記を推進します。

①軽井沢外への誘導:

御代田、佐久、東御等も同時に楽しんでもらうため、しなの鉄道との連携強化。平日でも満車になる軽井沢駅及び中軽井沢駅前の駐車場を立体化して収容能力増強し、半日以上の長時間利用の駐車料金を下げます(例えば中軽井沢駅前なら500円→300円。その分短時間利用を200円→300円に)

②旅行シーズンの分散:

紅葉後からGWまでは町内は閑古鳥、故に飲食店などがどんどん数年で閉店します。夏と冬の格差解消が課題で、カーリング等のウィンタースポーツは発展の余地あり。カーリングの国際大会が軽井沢で開催されるのに、イマイチ盛り上がりに欠けます。また中国南部(香港や台湾含む)や東南アジアは雪が降らないので、これらの国からの観光客は雪を喜ぶ傾向がありますので、この地域への売り込みが効果的。北海道のやり方が参考になるはずです。

*医療ツーリズムも本来季節を問わないものであり、特に閑散期での外国人誘導と関東圏のクリニックの誘致も一考の余地あり。空気の良さもあって文豪や外国人の療養先に選ばれてきた歴史をアピール

③迂回路や渋滞緩和システムの整備:

住友電気やNECが大学と協力して一部自治体で試行している、AIを活用した渋滞緩和システムを導入。このシステムは、今年4月岡山県で実証実験成功し、今後各地で導入が進むと見込まれます。或いは鳥井原橋の拡張等、今まで進められてきた迂回路整備を拡大していきます。

 

3.国際観光都市にふさわしい街づくり

 オーバーツーリズム対策をしたうえで、観光客の数を増やすのではなく一人一人の満足度向上を目指しつつ、住民にとってもメリットのある策を進めます

①市内循環バスの増加:

現在は終バスが19時台、夜に飲んだら代行かタクシーしか頼れなません(観光シーズンはこれも不足する)。せめて、飲食店が概ね閉店する22時までの運行拡大を目指します。現在運行している千曲、西武、草軽に要望してもダメなら、この3社と競合しないように夜間に限って町営バスを運行します。

②主要観光地での無料Wifiの拡充:

現状、主要観光地のいくつかでは公共Wifi入りますが、電波が弱いです。特に外国人観光客にとってはWifiを使えるか否かでローミング料金が大幅に異なってきます。日本人でも、若年層中心に携帯電話料金に対して敏感であり、管政権の携帯電話料金引き下げは高く評価されました。旧軽井沢銀座、プリンスショッピングプラザ 、駅構内を中心にWifi環境強化します

③マナーの注意喚起:

外国人が日本のマナーを知らないのは、ある意味当然です。逆に、言われれば理解してもらえることが大半です。例えばホテル宿泊時には必ずホテルWifiを利用するはずですが、マナー注意事項(喫煙所以外では禁煙、23時以降は静かにする、列に並ぶ際は横入りしない、等)をしっかり読まないとWifiに繋げられないといった仕組みを整備します。

 

4.国際文化保養都市を守るための、罰則規定を伴う環境・景観保護

自然環境を保護するための軽井沢町独自の要綱には、いずれも罰則規定がありません。これに従わない業者が出てくる可能性は十分ありえます。現在策定中の環境基本計画に罰則規定を盛り込むか、景観法を適用して軽井沢町を景観行政団体に移行させ、罰則を制定します。

主要先進国で、外国人の不動産購入に対し比較的緩かったのがアメリカと日本。それ以外の国では外国人に対し明確な購入規制を定めている。アメリカが金融引き締めに転じ、金利上昇とドル高を招いたため、アメリカへの不動産投資意欲が減少し、ゆえに日本の物件の引き合いが強い。軽井沢も既にそのターゲットの一つとなっている

 

5.高齢者の健康増進

 公的コストという観点で見れば、病気やけがになってしまった後の医療費よりも、それを防ぐための予防対策に注力した方が少ないトータルコストで済むことが知られています。2万人という人口規模の軽井沢町政においては、医療体制がより充実している近隣自治体との連携に注力しつつ、主に高齢者の健康増進に注力すべきと考えます。都道府県別寿命ランクにおいて、長野県は男女ともに全国1位を争う位置にいながら、健康寿命(医療や介護を日常的に必要としない期間)は25位前後。軽井沢町でも、健康寿命が課題となります。

タクシー券補助:

高齢者のお出かけを促進することで心身の健康増進を図る試みに、「すこやかお出かけ利用券」が既にありますが、ジム・温泉・タクシー・バス向けに合わせて年間5000円ではほとんど効果ありません。タクシーだけでも、年間30000円(2500円*12か月のイメージ)を全75歳以上に支給。町内75歳以上人口は約3000人なので、年間予算は9千万円。上述のバスの増強は、この問題ともつながってきます。

*軽井沢と同じく財政力の高い飛島村では、要介護高齢者に年間最大約6万円のタクシー利用を補助

*以前の町長選でも、ある立候補者が上記に近い内容を提案していたが、それを模倣したわけではない。逆に言うと、他の方も思うような課題が、そのまま4年間見過ごされてきたということ

②毎日の歩数インセンティブ

iPhoneなどの標準搭載されている健康アプリに表示される歩数に応じ、クーポン券を配布。半年に一度、アプリ画面をスキャンしてスマホから送信し、クーポン券を郵送或いはスマホダウンロード。

カーリングは「冬のゲートボール」:

平野部ではゲートボールが一年を通じて楽しまれており、高齢者交流の場となっていますが、軽井沢では冬にゲートボールは厳しいですね。逆に、軽井沢の強みでもあるカーリングを通じて高齢者の健康増進図ります。カーリングの特徴として、健常者、障碍者、高齢者が一緒にプレーできるという点があり(他のスポーツでは、これらを区分してプレーする場合が多い)、カナダや北欧ではそうした幅広い層のカーリング参加が社会全般に浸透。風越公園には既に国際大会を開催できるようなアイスパークがあるが、ここまで立派なものでなくても、気軽に利用できるカーリング場を更に整備します(町営であれ民間であれ、屋内であれ屋外であれ)。

風越公園のアイスパークはカーリングナショナルトレーニングセンターに指定されており、地元の軽井沢SC等は国内トップクラスのチーム。軽井沢中学にもカーリング部があり、20-30人の部員がいる。この中でもトップクラスの生徒がSC軽井沢アカデミーに選抜され、世界で活躍。今年の世界ジュニア選手権女子で優勝(日本勢としては初)。軽井沢町姉妹都市であるカナダ・ウィスラーもウィンタースポーツが盛んで、2010年バンクーバー五輪ではボブスレーノルディック複合の会場になったが、スポーツを通じての更なる交流が望まれる。カーリングを冬の軽井沢の目玉イベントにすれば、夏冬の観光客格差を埋める事にも

 

6.職員活性化:

 良い町を作るには、町役場の職員に活力がなければなりません。それは、豪華なハコを建てる事では実現しません。フレックスタイムやリモートワーク等を促進し、昇給も躊躇なく検討します。上述の通り、リモートワークの前提は「手渡し書類の削減・ハンコ文化の根絶」であり、そのシステム構築に努めます。

*現状の職員数は、医療系含めて420人。仮に平均5万円のベアとして、年間2100万円の人件費増